繰り上げ返済には、毎月返済額は変えずに返済期間を短くする「期間短縮型」と、返済期間は変えずに毎月返済額を削減する「返済額軽減型」の2種類があります。
一般的には、「期間短縮型」のほうが利息削減効果が大きいと説明されますが、正しくはどちらの方法も利息削減効果は同じです。このことは後ほどご説明します。
今回は、2種類ある繰り上げ返済方法のおさらいと、どんな場合にどちらの返済方法を使うのがよいのかアドバイスさせていただきます。
期間短縮型とは?
期間短縮型では、毎月返済額は変更せずに、返済期間を短縮することによって、短縮期間分の利息が削減されます。
例えば毎月返済額が10万円で、直近の毎月返済額の内訳が元金6万円・利息4万円のケースを考えてみます。この場合、例えば6万円を繰り上げ返済することで、支払う予定だった利息4万円を払わずに済むことになります。
返済額軽減型とは?
返済額軽減型では、返済期間は変更せずに、毎月返済額の元本を減らすことによって、それに対応する利息が削減されます。
例えば、毎月返済額が10万円でその内訳が元金6万円・利息4万円、残返済回数120回のケースを考えてみます。この場合、例えば6万円を繰り上げ返済することで、毎月返済額の元金が500円減少し(6万円÷120回)、減少した元金500円に対する利息も毎月減少することになります。
イメージとしては、繰上返済することにより、元々の毎月返済額100,000円が、99,100円(元金59,500円、利息39,600円)に減少するといった感じです。
※ここでは説明を簡略化するため、利息等を計算する条件は省いています。あくまで期間短縮型と返済額軽減型の違いを理解していただくためのイメージとお考えいただければ幸いです。
なぜ、期間短縮型のほうが利息削減効果が大きいと言われるのか?
冒頭でお伝えしたように、期間短縮型と返済額軽減型の利息削減効果は同じです。それにも関わらず、期間短縮型のほうが利息削減効果が大きいと説明されることが多いようです。
なぜ期間短縮型のほうが利息削減効果が大きいと説明されるかには理由があります。次の表をご覧ください。
<条件>
・ローン残高:3,000万円
・返済期間:25年
・利息:2%
・繰上返済額:1ヶ月後に100万円
期間短縮型 | 返済額軽減型 | |
当初毎月返済額 | 127,156円 | 127,156円 |
繰上返済後毎月返済額 | 127,156円 | 122,906円 |
毎月返済額削減額 | 0円 | 4,250円 |
利息削減額 | 629,134円 | 270,553円 |
表を見ていただいてお分かりの通り、期間短縮型の方が圧倒的に利息削減額が大きいのです。そのため、期間短縮型の方がお得であると説明されるのです。
しかし、この説明には重大な欠陥があります。なぜなら、返済額軽減型の再投資効果が計算されていないからです。
細かい計算は省きますが、返済額軽減型で得られる毎月返済額の削減額を、また繰り上げ返済に充当(投資)していけば、最終的には期間短縮型も返済額軽減型も利息削減効果は同じになります。
基本的には「返済額軽減型」を選ぶべき
最終的には、期間短縮型も返済額軽減型も利息削減は同じになりますので、繰り上げ返済でどちらのタイプを選んでも損も得もありません。
それでも、繰り上げ返済をするなら返済額軽減型がお勧めです。理由は2つあります。
一旦短縮した返済期間は元に戻せない
期間短縮型で返済期間を短縮すると、返済期間を元に戻すことは原則できません。元々のローン契約の返済期間は無関係になります。
現在の月々返済額が負担でなければ期間短縮型で問題ありませんが、多くの人にとっては返済額軽減型で毎月返済額を削減していき、削減した分を再投資(繰上返済)するか、家計に回すかを選択できるほうがよいでしょう。
再投資の選択範囲が広がる
現在は空前の低金利で、住宅ローンにおいても1%、2%台の低金利の恩恵を受けいる方も多いのではないでしょうか?
逆に言えば、期間短縮型で繰り上げ返済すると、返済期間完了までの何十年もの間、その低金利での運用を確定させてしまうことを意味します。
先ほどの期間短縮型の繰り上げ返済の例で言えば、100万円を2%の複利で運用して25年後に629,134円の利息を受け取るという選択をするということと同じになります。
今後、金利は上昇していくかも知れません。そうなった時に有利な条件の金融商品に投資できるよう、返済額軽減型で家計に余裕分を残しておいたほうが選択肢が広がります。
例外的に「期間短縮型」を選択したほうがよい2つのケースとは?
繰り上げ返済は基本的に、「返済額軽減型」を選択したほうがよいとご説明してきました。ただし、例外的に「期間短縮型」を選択したほうがよいと考えられる2つのケースがあります。
返済期間より固定金利期間が短い場合
1つ目は、金利タイプが固定金利特約型などで返済期間より固定金利期間が短い場合です。つまり、固定金利特約期間が終了すると変動金利になる場合(あるいは改めてその時点での固定金利を選択)です。
この場合、変動金利のリスクをなくすため、返済期間=固定金利期間となるまで、期間短縮型を選択するのがよいでしょう。
浪費家タイプの人
もう一つのケースは、余裕資金があると浪費してしまうタイプの方です。前述で返済期間短縮型と返済額軽減型の利息削減効果は同じだと述べました。それは月々の削減額を再投資した場合です。
毎月返済額が削減された余裕分をうっかり使ってしまいそうな方は、期間短縮型にしたほうがよいでしょう。