確定拠出年金とは?
確定拠出年金とは、掛金の拠出金額が確定している年金のことです。言葉の意味がわかりにくいと思いますので解説します。
従来、年金と言えば公的年金や企業年金に代表されるように、拠出額は給料に応じて決まり、将来の「受取額が確定」している「確定給付型年金」が一般的でした。
それに対し、確定拠出年金は自分で拠出する金額を決め(確定)、自己責任で運用します。将来の受取額は確定しません。確定するのは拠出額です。
確定拠出年金は「受取額変動型年金」あるいは「自己責任型年金」などと名づけるとわかりやすいと思います。
厚生年金基金(確定給付型)とiDeCo(確定拠出型)の比較
厚生年金基金 | iDeCo | |
拠出額 | 給与等により変動 | 確定(各個人が決定) |
運用主体 | 基金 | 各個人 |
将来の給付額 | 確定 | 運用により変動 |
「確定拠出」と言っても、企業年金制度を持たない会社員の方で月5,000円~23,000円の範囲内で拠出額を選択できます。「確定拠出」というのは、将来の給付額を約束しない代わりに、年金制度の都合で拠出額を増減させることはないよという意味合いです。
非常に税制優遇された制度ですので、基本的にはお勧めできるものです。
メリット
毎月の掛金が全額所得控除の対象となる
所得控除とは、所得税や住民税の課税対象から差し引くことができるものです。個人型確定拠出年金の場合、掛金として拠出した金額の全額が所得控除となり、課税対象から外れます。
個人型確定拠出年金の場合、会社員の方は年間最大で276,000円を拠出することができます。所得税と住民税を合わせた税率が20%の方の場合、276,000円×20%=55,200円の節税効果となります。
運用益に課税されない
通常の株式投資で100万円の売買益が出た場合、20%の税率で20万円が税金となります。一方、個人型確定拠出年金で運用益がでても非課税で、税金がかかりません。
受け取り時も税制優遇
個人型確定拠出年金は60歳到達後、全額を一時金として受け取るか、年金として受け取るかを選択することができます。前者の場合、退職所得控除の対象となります。後者の場合は、公的年金等控除の対象となります。どちらの場合も税制的に優遇されています。
デメリット
60歳までお金を受け取ることができない
確定拠出年金の最大のデメリットは、原則中途解約ができず、最短でお金を受け取れるのは60歳の時ということです。
急にお金が必要になったという場合でも、個人型確定拠出年金に貯められているお金を引き出すことはできません。確定拠出年金は貯金とは違います。
個人型確定拠出年金を始める年齢によっても違いますが、例えば20歳から個人型確定拠出年金を始める人は、60歳までの40年間解約できない金融商品に投資をするという理解でいたほうがよいと思います。
ただし、老後資金のための貯蓄を途中で取り崩さないという自信がない人にとっては、途中解約できないことはかえってメリットになるかもしれません。
毎月手数料が発生する
銀行口座や証券口座を保有しているだけで口座管理手数料を取られるというケースは稀ですが、個人型確定拠出年金においては毎月口座管理等の手数料が発生します。金額は運営会社によって異なりますが、諸々の手数料合計でおおよそ月500円、年6000円程度が相場です。
毎月手数料が発生するというの嫌なものですが、メリットのほうで説明した所得税控除を考慮するとペイできますので、それほどデメリットとしてとらえる必要はないでしょう。
選択できる金融商品が少ない
個人型確定拠出年金は、運営会社が用意する金融商品の中から自ら選択して運用をします。個別株式への投資はできません。用意される金融商品の数は運営会社によって異なりますが、一般的に十数個程度です。
デメリットと書きましたが、実際はそれほど気にする必要はありません。個人型確定拠出年金の目的は文字通り年金であり、一攫千金で大きなリターンを狙っていくものではありません。ある程度リスクを抑えて運用する必要があります。
その場合、個別銘柄でアクティブに投資するよりも、プロが運用する投資信託で運用するほうがうまくいくでしょう。年金資金という視点からすれば、個別銘柄への投資は必要ないのです。
iDeCOはこんな人に向く
ある程度の余裕資金があり、その資金を年金(老後資金)のために運用したいと考えている人にとっては、個人型確定拠出年金は素晴らしい制度です。税制メリットが大きく個人型確定拠出年金を活用しない理由が全く見当たりません。
資金運用はしたくない、安全に老後資金として貯蓄しておきたいという考えの人でも、個人型確定拠出年金を活用したほうが断然有利です。
個人型確定拠出年金の金融商品の中で定期預金など元本が保証されているものを選択すれば、運用リスクをゼロにして毎年の所得税や住民税の節税という税制メリットだけを享受できるからです。
iDeCoの定期預金で節税 | 元本保証年利14%で運用する裏技とは?
- 余裕資金があり、その資金を老後資金のために運用したいと考えている人
- 余裕資金があり、その資金を老後資金のために貯蓄しておきたい考えている人
iDeCoはこんな人には向かない
定期預金であれば、いざという時に途中解約ができます。しかし前述のとおり確定拠出年金は途中解釈ができません。節税効果ばかりに目が行き、定期預金代わりに確定拠出年金を利用しようとすると痛い目に合うかもしれません。
- 途中解約ができないことを理解していない人
- 余裕資金ではないお金で確定拠出年金に拠出しようと考えている人
NISAとの違い
NISAは株式投資の売買益や配当金に対して課税されないというメリットがありますが、株式投資の運用資金に対して所得税控除があるわけではありません。全く性質の異なるものです。
節税メリットは個人型確定拠出年金のほうが圧倒的に大きいですが、長期にわたって資金を拘束されたくないという方はNISAでの運用が向いているでしょう。
iDeCo(確定拠出年金) | NISA | |
税制優遇対象 | 運用益 拠出額 |
運用益 |
換金性 | 60歳まで引き出しできない | いつでも換金できる |
向く用途 | 老後資金 | 通常の資産形成 |
拠出限度額
個人型確定拠出年金では、月額の掛け金(拠出できる金額)の限度額が定められています。その限度額は職業(第何号被保険者なのか)によって異なります。
対象者 | 条件 | 拠出限度額 |
自営業者(第1号被保険者) | 年額81.6万円(月額6.8万円) | |
会社員(第2号被保険者) | 勤務先に企業型確定拠出年金や確定給付年金などがない場合 | 年額27.6万円(月額2.3万円) |
勤務先に企業型確定拠出年金や確定給付年金などがある場合 | 年額24.0万円(月額2.0万円) | |
公務員(第2号被保険者) | 年額14.4万円(月額1.2万円) | |
専業主婦(第3号被保険者) | 年額27.6万円(月額2.3万円) |
節税効果についての注意事項
働いていなく収入のない方(主婦など)の場合、そもそも控除する所得がありませんから節税効果は得られないことに注意して下さい。※その場合でも運用益への非課税メリットは得られます。
主婦の方の場合、資金拘束がなくいつでも換金できるNISAのほうが使い勝手がよいかもしれません。
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まとめ
国はなぜこれほどまでに個人型確定拠出年金を優遇しているのでしょうか?うまい話にはワナがあるということもありますので気になりますよね。
恐らく、国は将来にわたって公的年金を維持することが難しいと考えているからではないでしょうか?そのために国民自身が自ら老後資金を蓄えることを促進するために、個人型確定拠出年金を優遇していると考えられます。
これは根拠のない話ではありません。確定拠出年金の企業版である企業型確定拠出年金も、確定給付型の企業年金を維持することが困難であることを背景に、ここ十数年で急速に広まりました。同じようなことが国においても起きていると考えられます。
年金は国が面倒を見てくれるものという認識から、自己責任で用意するものという認識に改めていく必要がありそうです。