「金利が上昇してきたら変動金利から固定金利に切り替える」は絵に描いた餅

住宅ローンを変動金利にするか固定金利にするかは難しい問題です。金利は変動金利が低いものの、将来の上昇リスクが懸念されます。

「金利が上昇してきたら変動金利から固定金利に変更すればいいんじゃないの?」と考える方もいるでしょう。

確かに、金利が低く安定している時に変動金利のメリットを享受し、金利が上昇しそうなタイミングで固定金利に切り替えることができれば理想的です。

しかし、現実的にはこれはとても難しいことと言わざるを得ません。もっとはっきりと言えば「絵に描いた餅」です。

なぜでしょうか?具体的な数字で見ていきます。

なぜ固定金利への切り替えは難しいのか?

以下、シミュレーションをしながら変動金利から固定金利への切り替えの難しさを見ていきます。

<シミュレーション条件>
ローン金額:3000万円 返済期間:35年

ローン締結時

変動金利0.50% 35年固定金利1.30% 金利差0.80%

2017年9月時点で変動金利0.50%、固定金利1.30%というのは実態に近い数字です。この時の金利差は0.80%です。

借入金額3,000万円、返済期間35年という条件で、変動金利にした場合、固定金利にした場合の月々返済額は下記の通りです。

  変動金利 固定金利 差額
月々返済額 77,875円 88,944円 11,069円

毎月の返済額は11,069円違います。金利が上昇するまでは変動金利にして、上昇したら固定金利に切り替えると考えたくなるのも無理はないでしょう。

しかし、冒頭に書いたように上手なタイミングで固定金利に切り替えるのは非常に難しいのです。

なぜなら、変動金利に先立って固定金利が上昇するからです。

例えば、ローン締結5年後、次のような状況になった時に変動金利から固定金利に切り替えることができるでしょうか?

ローン締結5年後

 

変動金利0.50% 35年固定金利1.50% 金利差1.00%

  変動金利 固定金利 差額
月々返済額 77,875円 91,855円 13,980円

変動金利は変わっていませんので、毎月返済額にも変化はありません。そのような状況で、金利が上昇した固定金利にわざわざ切り替えようと考える人はあまりいないでしょう。

変動金利は上昇していませんし、ローン締結時よりも高くなっている固定金利に切り替えるのは「損した」ように感じるからです。

心理としては当然のように感じますが、経済合理性で考えた時には固定金利に切り替えないという選択は正解でしょうか?

今後の金利がどのように変化をするかは誰にもわからないため、明確な正解・不正解はありません。しかし、固定金利が上昇するということは、時間を経て変動金利も上昇するということです。

上記からさらに5年経過した時点では、次のような状況になることも想定できます。

ローン締結10年後

 

変動金利1.00% 35年固定金利2.20% 金利差1.20%

  変動金利 固定金利 差額
月々返済額 84,685円 102,485円 17,800円

お気づきでしょうか?

繰り返しになりますが、変動金利に先立って固定金利が上昇します。変動金利が上昇していない段階で、住宅ローン締結時よりも条件の悪くなった固定金利に切り替えるというのは、心理的に難しくなります。誰でも過去選択できた条件よりも悪い条件を選びたくないからです。ここまでが前段で述べたことです。

次に起きるのは変動金利の上昇です。変動金利が上昇した時点では、固定金利は更に上昇している可能性が高いでしょう。そうなると、ますます固定金利に切り替えるのは難しくなります。

つまり、金利が上昇したら固定金利に切り替えるというのは、事実上無理なのです。もし、固定金利に先立って変動金利が上昇するならば、それをきっかけとして固定金利に切り替えようという心理になりますが、事実は逆です。固定金利の上昇が先なのです。

もちろん、変動金利の上昇が上記のような1.5%で留まれば、変動金利を選択して正解ということになります。しかし、金利の先行きは誰にもわかりません。35年のような長期ローンだと、変動金利がいつの間にかローン締結時に提示されていた固定金利を上回ってしまうリスクは高くなるのです。

上記からさらに5年後、次のような状況になったらどうでしょうか?

ローン締結15年後

 

変動金利1.50% 35年固定金利3.00% 金利差1.50%

  変動金利 固定金利 差額
月々返済額 91,855円 115,455円 23,600円

このように、変動金利が「ローン締結時に提示されていた固定金利」よりも高くなってしまう状況は十分に考えられます。

しかし、このようになっても後の祭りです。ここから更に上昇してしまうかも知れない変動金利のリスクを考えて固定金利に切り替えようとしても、既に固定金利は大幅に上昇してしまっています。

変動金利のままでも怖いし、固定金利に切り替えるだけの負担には耐えられないしということで、にっちもさっちもいかない状況になるのです。

固定金利への切り替えが難しい理由のまとめ

  • 金利上昇は変動金利よりも固定金利が先になる。
  • 金利上昇の状況に気がついても、当初の条件よりも悪くなった固定金利に切り替えるのは心理的に難しい。
  • 金利の上昇が大きくなればなるほど、固定金利への切り替えの心理的ハードルは高くなる。
 

住宅ローンは長期に渡るため、固定金利を第一義に考えるべきです。固定金利にした場合に、ローン負担が過大と感じる場合は住宅の取得自体を見なおしたほうがよいでしょう。

変動金利を選択できるのは、ローン金額が大きくない、ローン期間が短いなど金利上昇をした場合に耐えられる場合だけです。

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