上場株式の配当金はあらかじめ税金分が差し引かれて振り込まれます。これを源泉徴収と言います。源泉徴収は「源泉ありの特定口座」「源泉なしの特定口座」「一般口座」の口座種類に関わらずされます。何もしなければ源泉徴収された税金はそのまま国に納付されます。しかし今回ご紹介する3つの方法で源泉徴収された税金の一部を取り戻すことができます。取り戻すことができるのは、株の売買で損失を出した場合、または課税所得が695万円以下の場合です。
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そもそも配当金を源泉徴収されたくない場合はどうすればよいのか?
冒頭に述べたように上場株式の配当金は口座種類に関わらず税金分を源泉徴収されます。「源泉なし特定口座」は名前から源泉徴収をされないように思われるかもしれませんが、配当金については源泉徴収されます。源泉徴収されないのは株式譲渡益の税金についてです。
どうしても配当金を源泉徴収されたくない場合は、NISA枠を使いましょう。金額は限定されますが、配当金所得は非課税となり税金が徴収されません。
上場株式配当金の税金と証券口座の種類の関係
証券口座種類 | 通常口座枠 | NISA枠 |
源泉あり特定口座 | 源泉徴収あり | 非課税 |
源泉なし特定口座 | 源泉徴収あり | 非課税 |
一般口座 | 源泉徴収あり | 非課税 |
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正確に言えば、NISA枠の場合、源泉徴収されないのではなく、非課税なのでそもそも税金が発生しません。
納めすぎた税金を取り戻す方法
株式の譲渡損失が発生した場合、その損失分と配当金所得を相殺することができます。これを損益通算と言います。損益通算をすることにより、源泉徴収された配当金に対する税金の一部または全部を取り戻すことができます。
取り戻す方法は次の3つの方法があります。簡単で一般的な方法から紹介します。
1つの証券会社で源泉あり特定口座を利用する
1つの証券会社で源泉あり特定口座を利用している場合、自動的に株式譲渡損失と配当金所得を損益通算してくれます。配当金受取時にはいったん源泉徴収されますが、年末時点で株式譲渡損失と配当金所得を合算して損失になっている場合、翌年初に源泉徴収された税金の一部が還付されます。
この方法は一番簡単で便利です。源泉あり特定口座を選択する以外は何もする必要はありません。ただし何らかの理由で複数の証券会社を利用している場合や、源泉なし特定口座を利用している場合は次の方法を利用します。
申告分離課税方式で確定申告する
複数の証券会社を利用している場合や、源泉なし特定口座を利用している場合は、自動的に損益通算がされないため、自分で確定申告が必要です。
配当金の確定申告の方法には2種類あります。最初に利用者割合が多い「申告分離課税」での確定申告からご説明します。
申告分離課税は給与所得や事業所得など他の所得と切り離して(分離して)税金を計算する方法です。配当金所得において申告分離課税方式を選択した場合、配当金所得の金額に関わらず一律20.315%です。
結果的には「1つの証券会社で源泉あり特定口座を利用する」方式とほぼ同じです。違いは確定申告をする手間があることと、確定申告をしたことにより税務上の「所得」に影響が出ることです。
所得に影響が出ることにより、国民健康保険料の額が増えたり各種手当ての所得制限に引っかかることがあります。その意味で特段の理由がない限り、口座種類を「源泉あり特定口座」にすることをお勧めします。
総合課税方式で確定申告する
総合課税の場合、所得が多いほど税率が高くなる累進課税方式のため、申告分離課税方式で申告したほうが有利になる場合が多いのですが、課税所得が695万円以下の場合、総合課税で確定申告をするほうがおおむね有利になります。
ただし総合課税方式の場合、株式譲渡損失との損益通算ができないというデメリットがあります。
ですから総合課税方式は課税所得が695万円以下という条件に加え、株式譲渡損失がなく配当金収入のみというケースに使うのがよいでしょう。
3つの方法の比較
確定申告をしない |
確定申告をする | ||
申告分離課税 | 総合課税 | ||
税率 | 20.315% | 20.315% | 累進課税 |
配当控除 | なし | なし | あり |
株式譲渡損失との損益通算 | なし ※ただし、源泉あり特定口座の場合は自動的に行われる |
あり | なし |
所得 | 合計所得に含まれない | 合計所得に含まれる | 合計所得に含まれる |
※合計所得に含まれることによって、国民年金保険料等に影響を受けることがあります。
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