PBRの本質。PBRが1倍未満でも割安とは言えない2つの理由とは?の記事でPBRの弱点をご紹介しました。この欠点のためにPBRは株式投資指標としてあまり重要視されていない現状があります。
しかし少し工夫するとPBRはお宝銘柄を発見するツールとして活用ができるのです。今日の記事ではそのお宝株発見法をご紹介します。
PBRの弱点をおさらい
まず最初にPBRの弱点をおさらいします。
PBRは株価を一株当たり純資産で割ることにより計算されます。しかしその計算の根拠となる一株当たり純資産の数値は不確かであるということがPBRの弱点でした。
会社の保有する資産は、必ずしも会計上の価値と市場価格が一致するわけではないからです。例えば機械装置のようなものは、会計上の価値が1000万円だったとしても売却したら100万円でしか値がつかないということは十分にあり得ます。
そのため見かけ上のPBRが1倍未満で割安のように見えても実態は違う可能性があり、PBRが投資指標としてあまり重要視されていない原因となっています。
PBRの上手な活用法
単純に株価÷一株当たり純資産で計算されたPBRはあまり参考にならないのですが、仮に純資産を正確に市場価格で計算することができればPBRは強力な投資ツールとなります。
例えば時価総額が10億円の株式があったとします。その会社の持つ純資産額が現金換算で15億円相当だったとします。10億円を出すと15億円を手に入れられるわけですからこの株は間違いなく割安と言えます。
そのようなことは実際の株式市場ではあり得ないと思われるかもしれませんが、しばしばこのような割安株は実際に存在しています。
なぜこのような割安株が存在するのでしょうか?
それは市場価格ベースでPBRを算出するのが大変だからです。PBRが1倍未満の株式があっても、それが見かけ上なのか本当に割安なのかを判断できないのです。そのために本当の割安株であるお宝銘柄が見かけ上の割安株に混じって放置されているのです。
ですからもし市場価格ベースでPBRを計算することができれば、強力なお宝発見ツールとなるのです。
市場価格ベースでの純資産の計算の仕方
純資産を完全なる市場価格で見積もることは不可能ですが、概算であれば財務諸表から算出が可能です。会計の知識があったほうがよいですが、なくても下記の方法で計算が可能です。
方法論としては貸借対照表の資産項目を次のようなA・B・Cの3グループに分けます。
Aグループ | 現金預金、有価証券、受取手形、売掛金、土地、投資有価証券など |
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Bグループ | 貸付金など |
Cグループ | 棚卸資産、前払費用、建物、機械装置、無形固定資産、繰延資産など |
Aグループはほぼ現金と同じ価値を持つ資産です。Bグループはほぼ会計上の評価に近い資産であるが吟味が必要な資産です。Cは市場価値がほとんどない資産、あるいは市場価値の算定が困難な資産です。※グループ分けはあくまで事例です。
基本的には表面上の純資産額からCグループの金額を切り捨ててPBRを計算すればよいでしょう。(厳密にやるならばBグループの金額も切り捨てたほうがよいでしょう。Bグループの資産内容を精査するのは外部からでは難しいです。)
お宝銘柄のスクリーニングの仕方
お宝株式発見法の理論がわかったとしても、数千もある上場会社全ての資産をチェックすることは個人投資家には不可能です。
そこでスクリーニングが必要になります。まず証券会社の検索機能を利用してPBRが1倍未満で配当を行っている会社を選出します。
疑似割安株は業績の悪い会社が多く配当できる状態ではないことがほとんどです。ですから配当を行っている会社だけを選出すれば疑似割安株を振るい落とすことができます。
このようにして選んだ会社について、貸借対照表を調べ市場価値ベースでの純資産を計算していきます。
お宝銘柄の可能性のある株式具体例
このようにしてスクリーニングして選出できる株式銘柄の一つとしてウエスコホールディングス(コード6091)があります。
2017年12月5日現在、株価389円、PBRは0.46倍、配当利回りは2.57%です。最新の貸借対照表を確認するとCグループに属する資産の割合は少なく、お宝銘柄の可能性があると言えます。