たいていの投資指南書には損切りの重要性が書かれています。損失が拡大した場合に撤退するポイントを事前に定めておき、そのポイントに達したらロスカットすべきとされます。
一方でロスカットをする必要はないと主張する人もいます。無駄に損切りを繰り返すと損切り貧乏になってしまうというわけです。
私たちトレーダーはどちらの考えを採用すべきでしょうか?
実はこの相反する考え方はどちらも正しいと言えます。あなたのトレードスタイルにより採用すべき意見が異なってきます。具体的に見ていきましょう。
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必ずロスカットしたほうがよいケース
テクニカルトレードの場合
株価の動きそのものを分析してトレードを行うテクニカルトレーダーの場合は、一定のルールに基づきロスカットが必須です。
テクニカルトレードは過去のチャートの形などから将来の値動きを予測します。チャートがAという形になった場合、Bという値動きをする確率が高いというものです。
テクニカルトレードでの予測は100%ではありません。あくまでそのようになる確率が高いというものです。予測通りにならない場合もあります。
100%予想通りにならなくても、そのテクニカルトレードの手法が70%の確率で当たるとわかっていれば、10回トレードして7回は勝てるわけです。
そして同時に当たらなかった場合の対処が必要です。
負けトレードを損切りせずにいつまでも引きずっていると、1回の負けで全ての勝ち分を帳消しにしてしまうこともあります。
このトレードスタイルを機能させるためには外れた場合に淡々とロスカットする必要があるわけです。
一定のルールに基づいてトレードしなければ確率論が機能しなくなります。
FXの場合
FXの場合、トレードスタイルに関わらず損切りが必要です。
FXは2国間の通貨対通貨のトレードです。ドル円でトレードする場合、「アメリカと日本は相対的にどちらが強いか?」という大きなスケールでトレードしています。
価値分析は分析対象が大きくなればなるほど難しくなります。国という大きな単位で適切な価値分析(ファンダメンタルズ分析)をするのは不可能です。
正確な価値を把握できないのですから、自分の思惑と違う方向に向かった場合、それが一時的なものなのか長期的なものなのかが判断できません。
そのため、思惑と違った方向に向かった場合、素早い損切りが必要です。
信用取引をしている場合
株の信用取引をしている場合、一定の水準でロスカットするルールを作っておいたほうがよいでしょう。信用取引の場合、保有期間に応じてコストが発生するからです。
また信用取引で売りをしている場合、必ず損切りポイントを定める必要があります。上げは青天井ですので損切りをしないと損失が無限大に広がる可能性があります。
ロスカットしないほうがよいケース
企業分析をしてある会社の株は一株1000円の価値があると判断したとします。その時、株価が700円をつけていて割安と判断して株を購入しました。その後、株価はなぜだかわからないけれど、300円まで下げたとします。
このような時は私はロスカットしません。この株の価値は1000円と判断したわけですから、その判断に変更がない限り1000円になるまで持ち続けます。
もちろんそのように大きく下げた場合、原因を探ります。投資判断をしたときには気が付かなかったことがあり、それが原因で下げているかもしれません。
その上で当初の企業分析判断が間違っていると考えれば、損切りをすることはあるでしょう。
しかし単に市場が弱気であるという理由だけで損切りしてしまうのは合理的な考えではありません。価値あるものを安価で売却してしまうことになってしまいます。
それどころか、再度分析しても下げる理由が見当たらない場合は、より割安になったと考え、買い増しを検討するのが合理的な行動です。
株式の場合、買値からの乖離ではなく、自分が算定した企業価値と株価が見合っているかでポジション購入・保持・売却を判断するのが適切です。