ミックスローンはうまく活用すれば、金利の安い変動金利のメリットと、金利上昇の影響を受けない固定金利のメリットのそれぞれを享受することができます。
ただし、ローン契約が2つになるため、通常のローン契約よりも10万円程度初期費用が多くかかります。以下の内容があなたにとって10万円以上の価値があると考えられるのならば、ミックスローンを検討する価値があるでしょう。
ミックスローンとはどのようなものか
ミックスローンは、2つの金利タイプを組み合わせて設定するローンです。例えば、3,000万円の住宅ローン契約を行おうと予定しているケースで、2,000万円を固定金利に、1,000万円を変動金利にというような組み合わせです。
金利タイプを組み合わせることによって、金利の安い変動金利のメリットと、金利上昇の影響を受けない固定金利のメリットのそれぞれを享受することができます。
例えば、借入金額3,000万円、借入期間35年、元利均等返済、当初変動金利1.0%、35年固定金利2.5%のケースを考えてみましょう。
変動金利 | 固定金利 | ミックスローン | |
月々返済額 | 84,685円 | 107,248円 | 99,727円 |
当然ながら金利の低い変動金利タイプが最も月々返済額が少なくなります。次に月々返済額が少ないのがミックスローンタイプです。全額を固定金利にするよりも、一部金利の低い変動金利を混ぜているミックスローンの方が月々返済額が低くなります。
もちろん将来に渡ってずっと金利が変動しないのであれば、全額を変動金利にするのがお得です。しかし住宅ローンの返済は基本的に何十年にも渡るもので、将来の金利がどうなるかは誰にもわかりません。
十分あり得ることですが、変動金利が3%に上昇した時の状況を確認してみます。
変動金利 | 固定金利 | ミックスローン | |
月々返済額 | 115,455円 | 107,248円 | 109,984円 |
変動金利が3%に上昇した状況下では固定金利タイプが最も月々返済額が低く、変動金利タイプが最も高くなります。ミックスローンタイプも月々返済額が上昇していますが、変動金利の割合が少ないため、影響額は少なく留まっています。
当サイトでは住宅ローンは原則固定金利にすることをお勧めしているのですが、ミックスローンは基本部分を固定金利でリスクヘッジしつつ、リスクを取れる範囲で低金利の変動金利を利用できるため、人によって(その人の置かれているローン状況によって)は大きなメリットがあると言えるでしょう。
ミックスローンは、固定金利と変動金利の組み合わせだけでなく、固定期間の異なる固定金利の組み合わせも可能です。
目的が明確ならメリットの多いミックスローン
「ミックスローンは、金利低下局面では金利低下のメリットを半分しか享受できず、金利上昇局面では全固定金利型よりも損をする。どちらにせよデメリットだ。」とする意見があります。
しかし、これは住宅ローンを「得か損か」の視点で考えているからです。当サイトで一貫して言い続けていることですが、住宅ローンは「得か損か」で考えるべきではありません。
住宅ローンは投資ではないので、できるだけリスクを減らすのが原則です。理想はローン全額を固定金利にすることです。
しかしそうは言っても、金利の低い変動金利も魅力です。月々の返済額が少なく済むだけでなく、余裕資金を繰り上げ返済に回すことによって早くローン残高を減らすことができるからです。
「完全にリスクを取って変動金利を選択するのは怖いけれど、少しのリスクなら大丈夫」というときに活用できるのが、このミックスローンです。ミックスローンであれば、「大部分を固定金利でリスクヘッジをしつつ、一部リスクを取って金利の安い変動金利のメリットを享受する」ことができます。
変動金利の割合をどのくらいにすべきか?
ミックスローンにおいて、固定金利と変動金利の割合はどのようにするのがよいでしょうか?
一つの目安として、5年間で繰り上げ返済できそうな額、もしくはいざとなれば繰り上げ返済に充てられる余裕資金の預金額を変動金利部分のローン額にするのがよいでしょう。
「5年間で繰り上げ返済できそうな額」というのは、変動金利は途中で金利が変更になっても5年間は返済額を一定にする5年ルールを適用している金融機関が多いからです。途中で変動金利が上昇しても、5年間の間に繰り上げ返済で完済できれば、金利上昇の影響を受けなくて済みます。
また、「いざとなれば繰り上げ返済に充てられる余裕資金の預金額」というのは、金利が想定以上に上昇した場合でも、余裕資金で変動金利部分のローンを完済することができれば、金利上昇のリスクを避けることができるからです。
繰り上げ返済は変動金利から行う
繰り上げ返済は、金利の高いものから行うほうが利息削減効果は大きくなります。そのため、ミックスローンを繰り上げ返済する場合、固定金利から行いたくなるでしょう。
しかし、ミックスローンを利用する目的は「得すること」ではありません。大まかにリスクヘッジをしつつ、一部はリスクを取りながら金利の安い変動金利のメリットを享受することです。
ですから、リスクを残している変動金利部分を優先して繰り上げ返済することをお勧めします。変動金利部分のローンの残高が減少していけば、仮に金利が上昇しても月々のローン返済額を抑えることができます。
住宅ローンは、メリットを得ることよりもリスクを軽減することを優先して考えるべきです。