今、株式市場では宇宙関連事業が熱い注目を集めています。
日本はこれまで半導体業界や自動車業界といった大きなマーケットで世界に押されている部分がありました。
しかし、宇宙関連事業は新たな成長産業として期待される分野です。中でも注目すべき企業の一つが、証券コード5595のQPS研究所です。
QPS研究所のコーポレートサイト
QPS研究所のビジネスモデルは一言でいうと、宇宙から撮影した画像データを販売することです。
画像データの販売って儲かるの?と思われる方もいらっしゃるかと思います。私もそうでした。でも調べてみるとびっくりするくらいのポテンシャルがありそうです。
QPS研究所はどんな会社なの?
以下はコーポレートサイトからの引用です。
QPS研究所は世界トップレベルの高精細小型レーダー衛星「QPS-SAR」を開発。
夜間や天候不良時でも任意の対象を高分解能・高画質で観測できるSAR画像を提供しています。
現在は商用機3機を運用し、2027年度までには24機体制、そして最終的には36機による衛星コンステレーションを構築し、世界中のほぼどこでも特定地域を平均10分間隔で観測できる「準リアルタイムデータ提供サービス」を目指しています。
ビジネスモデルとしてはシンプルで、衛星を打ち上げ、その画像データを販売するというものです。
SAR画像という言葉は初耳の人が多いと思いますが、夜間や天候不良時でも観測できるということが特徴のようです。
衛星の画像データって誰が買ってくれるの?
QPS研究所の将来性は、画像データの需要次第。では、どのような用途で活用されるのでしょうか?
国防や安全保障
今のところ、QPS研究所のメインクライアントは防衛庁です。国防や安全保障はSAR衛星が最も力を発揮する分野の一つです。
SAR衛星は悪天候や夜間でも地表や建物の構造を把握できるため、敵の動向や基地の構造を分析するのに役立ちます。
また、国境付近の活動や密輸・不法入国の監視に役立ちます。
そのほか、海洋上の船舶や密漁船の動向監視にも有効です。特にレーダーによる船舶位置情報との併用で、より高精度な追跡が可能です。
橋や道路、建物などのインフラ管理
SAR衛星を用いて、老朽化による地形の沈下や傾きの変化をモニタリングすることが可能です。橋や道路、建物の監視に役立ちます。
例えば都市部での地下鉄工事が地盤沈下を引き起こしていないか確認したり、ダムや河川の水位変化や構造物の変化を監視し、災害を未然に防ぐことが可能です。
SAR衛星は植生の変化を捉えることができるため、森林破壊の検出に利用されます。森林伐採や違法伐採の監視に役立ちます。
そのほか、SAR衛星を用いて湿地の生態系変化や氷河の溶解状況をモニタリングし、気候変動の影響を分析することもできます。
農業・漁業
SAR衛星で地表の水分量や植生の成長具合を観測し、作物の収穫時期や病害リスクを予測する。農産物のモニタリングはとても需要があるでしょう。
そのほか、海面の温度や潮流を把握することで、漁場の特定に役立つでしょう。 そのほかにも、都市計画や科学研究など、いろいろな分野で需要がありそうです。
QPS研究所の強みは?
衛星画像データの需要や用途は限りなくありそうですが、宇宙関連事業は今後大きな成長が見込まれるだけに多くの競合が参入してくることが考えられます。
競合企業と比べて品質面や価格面で優位性があるかという点が大事になってきます。
私が考えるQPS研究所の強みは次の2つです。
悪天候や夜間でも撮影できる小型SAR衛星技術
QPS研究所は、小型SAR衛星技術に特化していて、悪天候や夜間でも高精度な地球観測データを提供できる点が大きな強みです。
現在打ち上げられている地球観測衛星のほとんどは、カメラ(光学センサー)を使用して地球を撮影しています。光学衛星は夜間や悪天候下での観測が難しく、QPS研究所のSAR衛星は大きなアドバンテージです。
日本国内でも、SAR技術に特化した企業は少なく、この分野ではトップクラスのポジションを確立しています。
QPS研究所のSAR衛星はコストが100分の1
夜間や天候不良時も撮影可能なSAR衛星は大きなアンテナと多量の電力が必要になるため、1トンクラスの大型衛星が一般的です。製造コストも莫大です。
QPS研究所のSAR衛星は、従来の衛星に比べて20分の1の質量の100kg台へと軽量化、コストも約100分の1と、常識を超えるイノベーションを実現しました。
これはすごい強みです!コストが低いので販売価格も他社と比べて引き下げることができるでしょう。
リスクは?
ここまではQPS研究所の魅力を書いてきましたが、投資先としてのリスクはどのようなことが考えられるでしょうか?
利益が出るまでには時間がかかる
まず一つ目が魅力のある水準の利益が出るまでには時間がかかるという点です。
QPS研究所の当面の目標は36機の小型SAR衛星を運用して準リアルタイムデータを提供することです。それに対して現在運用できている商用機は3機です。36機揃うには数年先になるでしょう。
ただ商用機3機ですでに営業利益が黒字化していますので、長い目で見れば大きな利益を期待できるのではないでしょうか。
費用が先行する
売上を伸ばしていくためには商用機の数を増やしていく必要がありますが、衛星機を増やすほど費用(正確には減価償却費)も増えていきます。
どうしても売上の前に費用が先立つため、しばらくの間は売上の伸びと利益の伸びが連動しにくい局面が続きます。
逆に言えば体制が整った後は利益が急拡大することが期待されます。Amazonのようなプラットフォーム型ビジネスと近いかもしれません。
Amazonも最初は売上を伸ばしつつも赤字が続いていましたが、一定の体制が整った後は利益が急拡大しました。
衛星は必ずしも予定通りに飛ばない
想像はつくと思いますが、衛星を飛ばすのはなかなか難しいことのようです。QPS研究所でも直近(2024年)で5号機、6号機の不具合が生じています。
ただQPS研究所にとって優位な点は製造コストが他と比べて格段に低いということです。失敗しても影響度が比較的少なくすみます。
まとめ
- 宇宙関連事業の事業環境は未知数です。まずビジネスモデルを構築するまでに莫大なお金と一定の時間が必要です。
- 最後のフロンティアと言われ大きな成長が見込まれる一方、競争相手も多くなります。また技術的側面からもまだ未確立な部分が多く、衛星の打ち上げ失敗など計画通りに進まないことも多いです。
- それでもQPS研究所の理念にはフロンティア精神とロマンがあり、投資先としては大きな魅力があると考えています。 2025年1月現在、最小単位では11~12万円程度で投資できます。
2025年1月19日追記
記事執筆後、自分の口座と子供の口座でそれぞれQPS研究所の株を買いました。
その数日後に会社からMSワラントの発表があり、株価は大幅に下落、現在は含み損となっています。
1年後、5年後はどうなっているでしょうか?その時までお楽しみに。
QPS研究所のコーポレートサイト